信じていた相手からの誘い
ある日、昔から信頼していた知人から「絶対に儲かる投資がある」と持ちかけられました。話を聞くうちに気持ちが動き、30万円を振り込んでしまいました。しかし、投資の話にはまったく実態がなく、お金は返ってきませんでした。
最初はショックで何も手につきませんでした。しかしインターネットで調べるうちに「少額訴訟」という制度を知りました。60万円以下の金銭請求なら、本人でも訴訟を起こせて、1回の審理で判決が出るというものでした。
訴状を作成・提出、しかし相手は受け取らず…
インターネットで少額訴訟について調べ、訴状や陳述書、証拠書類を自分で作成しました。証拠となるのは、相手とのやり取りの記録がわかるメールやLINEなどのスクリーンショット、銀行の振込明細などです。これらの書類を相手の居住地を管轄する簡易裁判所にレターパックで郵送しました。
ところが数日後、裁判所から「訴状が被告に届かず、戻ってきた」との連絡が入りました。被告が意図的に受け取りを拒否している可能性がありました。訴状が相手に届かない限り、少額訴訟を始めることはできません。

業者に居住調査を依頼し、付郵便送達を申し立て
簡易裁判所からは「付郵便送達」という手続きが可能であると説明されました。これは、相手が訴状を受け取らなくても、実際に住んでいることが確認できれば訴状が送達されたとみなされる制度です。
この付郵便送達を利用するためには、相手が本当にその住所に住んでいるという証拠が必要です。私は探偵事務所に居住調査を依頼しました。電気メーターの動き、郵便受けの配達物、住居の外観などを確認してもらい、1週間ほどで調査報告書が届きました。相手が遠方に暮らしている場合はなおさら、個人でこれだけの調査をするのは簡単ではありません。
さらに、役所に郵送で住民票を請求しました(役所によって申請様式や必要書類が異なりましたので事前に電話で確認しました)。住民票は相手が転居していない証明になります。
これらの資料を簡易裁判所に提出し、付郵便送達の申し立てが認められました。
数分で終わった少額訴訟と判決
期日は当初予定されていた日からおよそ1か月後に設定されました。当日、私は緊張しながら簡易裁判所に出廷しましたが、被告は時間になっても現れませんでした。裁判官から「相手が欠席のため審理を終了します」と伝えられ、わずか数分で閉廷しました。
判決文には、「原告の請求を全面的に認め、30万円の支払いを命じる」との記載がありました。ついに、正当性が認められた瞬間でした。
最も費用がかかったのは居住調査
少額訴訟自体にかかった費用は、印紙代や郵送費で数千円程度でした。しかし、最も大きな出費は探偵事務所への居住調査の依頼料でした。私の場合はおおよそ2万円ほどでしたが、調査の質やスピードを考えると納得の内容でした。個人で調査するのは、簡単ではなかったと思います。
終わりに
少額訴訟は、泣き寝入りせずに自分で行動できる強力な制度です。書類の作成や裁判所とのやり取りは大変に思えますが、インターネットの情報や裁判所の窓口での相談を活用すれば、素人でも十分対応可能です。
今回の体験を通じて「泣き寝入りしなくてよかった」と心から思います。もし同じように被害を受けた方がいたら、少額訴訟の利用を検討してみてください。行動することで、前に進む一歩になるはずです。
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