少額訴訟における「付郵便送達」の手続きと流れを解説
訴状が届かないと裁判は進まない?
少額訴訟を起こした際、まず大切なのが「訴状を相手に届けること(=送達)」です。裁判は、相手に訴状が正式に届かなければ、手続きがスタートしません。
ところが中には、意図的に受取拒否をしたり、居留守を使ったりする被告もいます。そんなとき、「もう裁判はできないの?」と不安になるかもしれませんが、ご安心ください。
実は、訴状を受け取らない相手に対しても裁判を進めるための制度が用意されています。それが「付郵便送達」という方法です。
送達の基本ルールとは?
民事訴訟において、訴状や裁判所からの通知は、被告に「正式に送達」されなければなりません。
通常は、裁判所が訴状を簡易書留などで郵送し、相手が受け取ることで送達が成立します。これを「通常送達」といいます。
しかし、次のようなケースでは、送達が不成立となってしまいます。
- 郵便局から「不在」のまま戻ってきた
- 「受け取り拒否」で返送された
- 「転居先不明」として返送された
このような場合、原告側が動かない限り、裁判は止まったままです。

被告が受け取らないときの対処法「付郵便送達」とは?
相手が故意に受け取りを拒否したり、居留守を使っているような場合に活用できるのが、付郵便送達です。
これは、裁判所が訴状などの書類を相手の住所に「通常どおり郵送した」とみなして、たとえ実際に相手が受け取らなくても送達が成立したとする制度です。
つまり、訴状が相手に届かなくても、裁判を進行させることが可能になります。
付郵便送達の手続きの流れと必要書類
付郵便送達を申し立てるには、以下のような手続きを行います。
■ 申立ての手順
- 裁判所に「付郵便送達申立書」を提出
- 返送された郵便物を添付(封筒の表裏を含む)
- 被告の住所が正しいことが分かる資料があれば添付(住民票や公共料金の明細など)
■ 申立書の記載例(簡易)
○○簡易裁判所 御中
令和◯年◯月◯日
原告:〇〇〇〇
被告:△△△△
付郵便送達申立書
本件訴状は、令和◯年◯月◯日付で通常送達を行いましたが、被告が不在等により受け取りをしなかったため、民事訴訟法第109条に基づき、付郵便送達を申し立てます。
記
・訴状送付日:令和◯年◯月◯日
・返送理由:不在(または受取拒否等)
・送付先住所:〇〇市△△町□□番地 被告居住地
以上
裁判はどう進む?被告が出廷しない場合の扱い
付郵便送達が成立すれば、被告が出廷しないままでも裁判は進行します。
その場合、裁判所は原告の主張内容や証拠をもとに判断を下し、被告欠席のまま判決が下る可能性もあります。
ただし、相手が実際に住んでいない住所を使って送達した場合など、虚偽の送達申立ては信義則違反として判決が無効になる恐れがあるので、慎重に行いましょう。
注意点とよくある質問
Q:住所が不明な場合はどうなる?
→住所が不明なままでは付郵便送達はできません。正確な現住所を調査しましょう。
Q:相手が引っ越していたら?
→新しい住所がわかっていれば再送達の手続きが必要です。住民票の取得なども検討してください。
Q:送達が成立するのはいつ?
→裁判所が書類を保管した日が「送達日」として扱われます。
送達されないまま諦めないで。制度をうまく活用しよう
被告が訴状を受け取らないと、裁判が進まずに悩む人も多いですが、「付郵便送達」という仕組みを使えば、適切に裁判を進めることが可能です。
住所が正しいにもかかわらず、相手が受け取りを拒否している場合には、泣き寝入りせず、裁判所にしっかりと申立てを行いましょう。
少額訴訟は手続きがシンプルな反面、こうした“手順の壁”にぶつかることもあります。でも、制度を理解して対処すれば、きちんと解決に向けて進められますよ。
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