被告が訴状を受け取らなかったら?
少額訴訟を起こしても、被告が訴状を受け取らないと、裁判が始まることはありません。この原則は通常訴訟でも同じです。
筆者の少額訴訟でも、相手が訴状を受け取らなかったため、一度決まった裁判期日が白紙になる事態に見舞われました。
このように被告が訴状を受け取らない場合に、原告は「付郵便送達」という制度を利用することができます。
付郵便送達は、訴状が裁判所から郵送されたことをもって、訴状が被告に「送達」した(受け取った)とみなす制度です。
付郵便送達が設けられているのは、被告が訴状の受け取りを拒否する限り、裁判を開くことができない不利益を避けるためです。そのため、付郵便送達の申し立てには、「相手がその住所に暮らしているのに訴状を受け取らない」という居住実態の証明が必要となります。
付郵便送達を申し立てるためには、原告が相手の住所に出向いて、居住調査をしなければなりません。居住調査は原告自身でもできないことはありませんが、詳細な調査をする必要があり、簡単ではありません。
専門の探偵事務所が付郵便送達の居住調査を引き受けており、筆者もネットで探した探偵事務所に調査を依頼しました。費用は2万円ほどでした(料金は地域や探偵事務所によって異なります)。
この記事では、居住実態を証明するための調査内容や、探偵に依頼するメリット、費用の相場などをわかりやすく解説します。
居住実態を示す証拠とは?
付郵便送達の申し立てが裁判所に認められるためには、「被告が現在もその住所に暮らしている」ことを、具体的な証拠を示さなければなりません。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
- 電気・ガス・水道のメーターの作動状況(最近使われていることが分かる写真)
- 住居外観の写真
- 郵便受けに配達物がたまっている状況と写真
- 近隣住民への聞き込み結果(その人が今も住んでいるという情報)
これらの証拠をもとに、「その住所に確実に居住している」と裁判所が判断できれば、付郵便送達が認められる可能性が高くなります。
個人での調査はハードルが高い理由
付郵便送達の自力での住居調査は、以下の理由から簡単ではありません。
- 電気・ガスのメーターの場所がわかりにくい
- 写真撮影をしていると不審者と見なされる可能性がある
- 聞き込みはプライバシーの問題やトラブルの原因になりかねない
- 証拠としての「信頼性」が低いと、裁判所が認めてくれないこともある
とくに相手が遠方に暮らしている場合には、時間も手間も費用もかかり、精神的な負担も大きくなります。とくに相手がオートロックのマンションに暮らしている場合は、調査も簡単ではありません。また住民をつかまえて、相手が実際に暮らしているという証言を聞き出さなければなりません。
居住調査が首尾よくいかなければ、少額訴訟の手続きさらにが遅れる恐れもあります。

調査を依頼するメリット
こうした背景から、居住実態の調査を探偵事務所に依頼するのも選択肢です。探偵事務所に調査を依頼する主なメリットは以下の通りです。
- 申し立ての必要事項に沿った形で調査が行われる
- 裁判所が納得しやすい「報告書」が作成される
- 調査が迅速で、訴訟の遅延を防げる
- 自分で動かずに済むため、時間的・心理的負担が軽減される
報告書には、日時入りの写真、調査員による記録、近隣への聞き込み結果などが含まれており、裁判所への提出資料としても有効です。筆者も探偵事務所に居住調査を依頼しましたが、勝手がわかっているため調査もスムーズです。
居住調査と並行して、相手の居住確認のために「住民票の写し」を取得する必要もあります。
住民票の写しの取得は、原告自身で手続きする必要があります。住民票の写しは、被告の住所地の役場に申請します。自治体ごとに申請書が異なっており、手数料や返信用封筒の扱いも異なります。また最近では手数料のオンライン決済に対応する自治体も増えています。
例えば、定額小為替(数百円程度)の金額が違ったり、本人確認書類や少額訴訟の訴状のコピー提出が必要な場合もあるため、事前に役場のホームページで最新の手続きを確認するか、電話で問い合わせると安心です。
費用相場と依頼時の注意点
居住調査を探偵事務所に依頼した場合の費用は、おおよそ以下の通りです。
- 調査費用の相場:2万円〜10万円程度
- 調査期間の目安:1〜3日
費用は探偵事務所や調査対象となる地域によって異なります。また、依頼前に以下の点を確認しておくと安心です。
- 報告書のサンプルを見せてもらえるか
- 裁判所提出を想定した調査経験があるか
- 追加料金の有無やキャンセルポリシー
- 弁護士や司法書士との連携実績があるか
信頼できる探偵事務所を選ぶことが、スムーズな裁判進行のカギとなります。
まとめ
少額訴訟では、相手が訴状を受け取らないと手続きがストップしてしまいます。その際に有効な手段が付郵便送達ですが、実施するには「相手が本当にその住所に住んでいる」ことを裁判所に証明しなければなりません。
この証明には専門的な調査が必要となるケースが多く、個人で対応するのはリスクや手間が伴います。探偵事務所に依頼することで、信頼性のある証拠を短期間で入手でき、少額訴訟をスムーズに進めることが可能になります。
費用面も含めて総合的に判断し、自分の状況に合った対応を選ぶようにしましょう。
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