証券口座の差し押さえに挑戦!少額訴訟から半年、ようやく回収できたお金の話【体験談・後編】

少額訴訟の強制執行で証券会社に取り立てを依頼した際のイメージ画像 差し押さえ・強制執行体験
証券口座への差し押さえ命令後、取り立ての問い合わせを行った証券会社のイメージ(実際の会社名・画像とは無関係です)。

はじめに:少額訴訟で勝訴しても、すぐには終わらなかった

少額訴訟で勝訴し、相手に対して支払い命令付きの判決を得ることはできました。

法律上は、これで私の正当性が認められたことになります。それでも、そこからお金が戻ってくるまでには、思いもよらぬ長い道のりが待っていたのです。

少額訴訟の裁判にも出廷しなかった相手は、少額訴訟の訴状を送った当時の住所からすでに転居していました。そのため少額訴訟の判決は郵便局から裁判所に返送されてきたのです。

結果として少額訴訟は欠席裁判となり、私の訴えが全面的に認められる形で判決が出たものの、相手が転居しているため判決を届けられません。少額訴訟の判決は被告に送達、つまり届かない限り「効力を発揮しない」状態が続くことになります。

この時点で、私は「判決が出ただけではお金は戻らない」という現実に直面しました。少額訴訟に勝訴しても、その支払い命令付き判決を実行に移す段階では、また別の壁がいくつも待ち構えていました。

判決送達のための調査と公示送達の申立

私は少額訴訟を起こしたときと同じように、裁判所から意思確認された私は、すぐに「公示送達」の申し立てを行いました。

これは、相手の現住所がわからない場合でも、裁判所に判決が1週間掲示されることで、相手に判決が送達したとみなす制度です。私は相手の居住調査を探偵事務所に依頼しました。費用は約2万円でしたが、ここで判決が送達されて効力を生じないと、差し押さえと強制執行に進むことができません。

被告の居住調査報告を簡易裁判所に郵送、少額訴訟から約1か月後、ようやく裁判所に「判決が送達された」とことを電話で確認しました。この瞬間、ようやく少額訴訟の支払い命令付き判決を債務名義として、差し押さえと強制執行に移れる状態が整いました。

「ようやく次の段階に進める」。訴訟に勝っただけでは何も変わらない、という実感があるからこそ、書類1枚が「届いた」とされることの重みを知ったのです。

差し押さえ申立書を送付…しかし3週間音沙汰なし

すぐに私は、強制執行と差し押さえ命令の申立書を裁判所に郵送しました。

これで回収が進む――そう思っていました。しかし、待てど暮らせど、裁判所からの連絡はありません。3週間が経過し、ついに私はしびれを切らして裁判所に電話をかけました。

「差し押さえ命令申立書に不備があったため、そのまま保留になっていました」

この一言に愕然としました。私は素人なりにネットで情報を集め、申立書を作成したつもりでした。しかし、ネットで見つかるのは銀行口座や給与の差し押さえに関する情報ばかり。私が狙ったのは「証券口座」。証券口座の差し押さえ命令申立書の情報は非常に少なく、記載方法も特殊でした。

書式や記載方法について、裁判所は個別にアドバイスをしてくれません。だからこそ、自分で情報を集め、正しい形式を推測しながら申立書を作るしかないのです。特に証券口座の場合、取り立て対象の特定など、書き方ひとつで受理されないリスクがあります。

SNSの投稿から証券口座の存在をつかむ

なぜ私が証券口座をターゲットにしたのか?

理由は明確でした。相手の銀行口座は、すでに他の債権者に差し押さえられていたからです。これでは私が差し押さえ命令を申し立てたところで、ほとんど残高は期待できませんでした。

私は相手のSNS投稿に注目しました。そこには、日々の株取引の様子や、利用している証券会社の名前まで書かれていたのです。

「証券口座なら、まだ差し押さえられていないかもしれない」

そう考えた私は、証券口座に対する差し押さえ命令申立書の作成に着手しました。とはいえ、差し押さえ命令申立書の書式例も見つからず、完全に手探り。ブログの断片的な情報をもとに、申立書をなんとか作成しました。

このときほど「情報の断片をつなぐ力」が問われたことはありません。まるでパズルを組み立てるように、点と点を結び、一本の線にしていく作業でした。

少額訴訟の強制執行で証券会社に取り立てを依頼した際のイメージ画像
証券口座への差し押さえ命令後、取り立ての問い合わせを行った証券会社のイメージ(実際の会社名・画像とは無関係です)。

差し押さえ命令が競合…そして再申立へ

私は裁判所と何度も電話やFAXでやり取りしながら、裁判所から教えてもらった法律書も参考にして、証券口座に対する差し押さえ命令申立書を作成しました。

何度も書き直しをして、ようやく受理された差し押さえ命令申立。しかし届いた証券会社からの「陳述催告書」には衝撃の事実が。すでにその証券口座にも、他の債権者による差し押さえ命令が申し立てられていたのです。

このように差し押さえ命令が競合した場合、按分といって、債権額に応じて回収額が分配される仕組みになっています。私の債権額は30万円。回収できたとしても、按分がほんの一部になる可能性がありました。

そこで私は、いったんこの申立を取り下げ、別の証券口座に対して差し押さえ命令の申立をやり直すことにしました。再提出にまた時間がかかったものの、今度は他の差し押さえ命令が競合することはなく、取り立てに進めることができたのです。

証券会社とのやり取りも一筋縄ではいかない

取り立てを進めるため、私は証券会社に連絡を取りました。

ようやく回収のゴールが見え始めたと思ったやさき、また暗雲が立ち込めます。証券会社のホームページを探してみても、差し押さえに関する問い合わせ窓口など見当たりません。やむを得ず、お客様問い合わせ窓口に電話してみたものの、担当者は私の状況をまったく理解していない様子でした。

電話口からは「何の権限があって、口座からお金を取ろうとしているのか?」という態度が伝わってきます。弁護士ならいざ知らず、ただの顧客(私もこの証券会社に口座を持っていました)がいきなり差し押さえの電話をしても、信じられなかったのでしょう。

そこで私は少額訴訟の事件番号や判決内容、相手の証券口座情報などを整理し、改めてメールで問い合わせました。

このメールがきっかけとなり、証券会社側も裁判所に確認を行ったようでした。最終的に、私の取り立て依頼が正式なものであると認められ、ようやく手続きが進むことになったのです。

ついに振り込まれた回収金!そこに至るまでの3年間

少額訴訟の判決から半年後。ようやく相手の証券口座からの取り立てが成功し、回収金が私の口座に振り込まれました。

被害に遭ってから実に3年。自分で少額訴訟を起こし、訴状や差し押さえ命令申立書などの書類を自力で作成、裁判所と何度もやりとりし、証券会社にも説明…思えば長い戦いでした。

振り込まれた金額は、私の債権額ぴったりの30万円(ほかに遅延損害金、訴訟費用なども加算されています)。「回収できた」という事実に、ようやく安堵しました。正直、精神的には何度も折れかけ、あきらめようとしたことも何度もありました。

まとめ:情報と粘り強さが回収の鍵

少額訴訟で勝訴することは、あくまでもスタートラインに過ぎません。

実際にお金を回収するには、差し押さえと強制執行の手続きを正しく進めなければならないし、申立書の書き方や送達の仕組みなど、法律の素人には難しいことばかりでした。

しかし、情報を集め、時には専門家に頼り、何より諦めずに行動し続ければ、道は必ず開けるのです。私のように、完全な素人でも、時間はかかっても「取り戻す」ことができました。

この体験が、これから本人訴訟や差し押さえに挑戦する方の一助になれば幸いです。

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