相手の口座を調べる方法|少額訴訟で勝っても差し押さえできない?

alt="差し押さえ対象となる銀行口座のイメージ図" 差し押さえ・強制執行体験
相手の銀行口座がわかれば、差し押さえの手続きに進むことができます

相手の口座を調べる方法|少額訴訟で勝っても差し押さえが大事

少額訴訟で勝つだけではお金が戻らない現実

少額訴訟で勝訴したからといって、自動的にお金が戻ってくるわけではありません。少額訴訟で支払い命令付きの判決が出たとしても、被告が自分からお金を支払わなければ、原告から相手の財産への差し押さえに動かなければならないのです。

差し押さえ裁判所を通じて申し立てることになります。差し押さえを行うには、相手の「財産の情報」、とりわけ銀行口座などの差し押さえ対象となる資産の特定が必要です。名前や住所だけではなく、「どの金融機関の、どの支店の口座か」まで分からなければ、銀行口座への差し押さえは実行できません。

相手の口座を調べる方法とは?

探偵事務所による調査

実は、個人が合法的に他人の銀行口座や証券口座を調べる方法はほとんどありません。銀行は個人情報保護の観点から、第三者に口座情報を開示することはありません。

一部の探偵事務所では、「口座調査」に対応しています。費用は10万円〜30万円前後と高額ですが、成功報酬型のプランを用意している事務所もあります。ただ、銀行口座の特定に至らない場合でも、費用がかかる場合も少なくありません。

弁護士会による金融機関照会

弁護士に依頼すれば、弁護士会を通じて金融機関に口座の有無を照会することも可能です。ただし、これは弁護士がその事件の代理人として訴訟などを受任していることが前提になります。つまり、単に「相談しただけ」ではなく、実際に訴訟の代理人として活動している必要があります。

もっとも、弁護士が少額訴訟を引き受けることは、費用対効果の点から多くありません。少額訴訟は訴訟額が少なく、回収できないリスクも大きいため、割に合わないためです。そのため少額訴訟では、弁護士会による金融機関への照会は現実的な手段とはいえません。

財産開示手続き・第三者からの情報取得手続

少額訴訟などの支払い命令付きの判決を債務名義(法的な根拠)として、裁判所に「財産開示手続」を申し立てることもできます。これは債務者(裁判の被告)に対して、裁判所が財産情報を開示させる制度です。ただし財産開示手続きを申し立てるには、「強制執行を行って、完全に弁済を得ることができなかったこと(不奏功要件)」が必要です。

一方、財産開示手続きと同じように、金融機関などから債務者の情報を開示させる「第三者からの情報取得手続」もあります。このうち「預貯金債権」については、少額訴訟の判決などの債務名義があれば、不奏功要件がなくても(強制執行を行っていなくても)申し立てることができます。裁判所が申し立てを認めれば、銀行などから債務者の口座情報を得られる仕組みです。

ただし財産開示手続き、第三者からの情報取得手続のいずれも、申立書の作成は煩雑です。弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合は、高額な費用がかかるため、費用対効果も考慮する必要があります。

もう一つ注意が必要なのは、銀行などの第三者から債務者に情報取得手続があったことについて「通知」されることです。通知があったことで、債務者が預貯金を移転させるリスクがあります。

alt="差し押さえ対象となる銀行口座のイメージ図"
相手の銀行口座がわかれば、差し押さえの手続きに進むことができます

実際に口座情報を突き止めた体験談

私は相手の口座を把握していました。それは、お金の振り込み先となった銀行口座でした。ただし、その口座からお金を回収できる見込みはありませんでした。相手の口座にあったお金は、ほかの被害者からすでに回収されていたからです。差し押さえと強制執行は早い者勝ちなのです。

私が実際にお金を回収したのは、相手の証券口座でした。相手は「株やFXで稼いでいる」などと、SNSに頻繁に投稿し、羽振りの良さを装っていました。しかもSNSでは、利用している証券会社の名前まで公開していました。

ただ、証券口座の差し押さえ命令申立書の作成は簡単ではありません。証券口座が扱う「証券」には、日本株、外国株、債券など、無数の証券があります。銀行口座などの差し押さえ命令申立書と違って、証券口座の差し押さえ命令申立書の記載例は、ネットを探してもなかなか見当たりませんでした。

差し押さえに必要な申立書と手続き

差し押さえ命令を裁判所に申し立てるには、「金融機関名」だけではなく、支店名まで特定できなければなりません。

申し立てには裁判所の書式にのっとった「債権差押命令申立書」と「判決文の写し」が必要です。

書類には、債権者(自分)と債務者(相手)の情報、差し押さえる対象(例:○○銀行○○支店の普通預金口座)を正確に記載する必要があります。フォーマットは裁判所のホームページや窓口で入手できます。

これから少額訴訟を考えている人へ

差し押さえは「少額訴訟に勝ってから考える」のではなく、少額訴訟の前から、相手の勤務先、銀行口座などの情報を集めておくべきです。少額訴訟で判決を得ることができても、相手が判決に従うとは限らないからです。

ただし口座調査や差し押さえの準備は、相手に気づかれないように進める必要があります。差し押さえの前に資産を移されると回収が困難になってしまいます。

まとめ|少額訴訟と差し押さえは「情報戦」

少額訴訟の勝訴判決は「ゴール」ではなく、資金回収の「スタートライン」にすぎません。差し押さえを成功させるには、口座情報というピースが欠かせません。手間も費用もかかりますが、計画的に動くことで取り戻せる可能性はあります。

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