少額訴訟で証拠がなぜ重要か?
少額訴訟や通常訴訟などで、お金の支払いを相手に命じる判決を得るためには、「相手にお金を渡した」「返してもらえなかった」という事実を証明する証拠書類が極めて重要です。このような証拠の有無が少額訴訟の結果を左右します。
ただ、投資詐欺や借金など、個人間のお金のやり取りでは、借用書や契約書を交わさないことがほとんどです。借用書や契約書がない場合でも、お金の返済を求める少額訴訟や通常訴訟を起こすことが可能です。個人間でお金をやり取りした事実さえあれば、借用書や契約書といった書面がなくても「消費貸借契約」が成立するからです(民法587条)。
消費貸借契約によって、貸したお金を同量のお金を返還する義務が生じます。たとえば国税庁のサイトは次のように説明しています。
消費貸借とは、当事者の一方(借主)が相手方(貸主)から金銭その他の代替性のある物を受け取り、これと同種、同等、同量の物を返還する契約で、これは民法第587条《消費貸借》又は同法第587条の2《書面でする消費貸借等》に規定する消費貸借をいいます。
とはいえ、少額訴訟の裁判官や、同席する司法委員は、原告と被告の関係性や過去の経緯を一切知りません。借用書や契約書といった証拠がなければ、お金の返済を求めるという主張を裏付けることができません。少額訴訟は原告側の勝訴が8~9割といわれていますが、「借用書や契約書が存在しない」という被告の反論に備えて、証拠を十分に準備しておかなければなりません。
少額訴訟で有効な証拠書類とは?
銀行の振込記録
銀行口座への振込記録は、金銭の授受を直接証明できる強力な証拠になります。とくにネット銀行の場合、オンラインでの閲覧可能期間が過ぎた履歴も、銀行に依頼すれば取引明細を郵送で取り寄せることが可能です。早めに請求しておきましょう。
メールやLINEなどのやり取り
- 相手がお金の返済を約束したメール
- 返済について言及したLINEのスクリーンショット
これらも有力な証拠になります。注意すべきは、LINEなどの通信アプリのメッセージは相手側で削除される可能性があることです。消される前にスクリーンショットを取り、印刷して保存しておくことが大切です。

陳述書(経緯のまとめ)
正式な契約書や領収書がない場合でも、お金を渡した経緯や相手との関係をまとめた「陳述書」を提出することで、裁判官に事実関係を伝えることができます。
陳述書には、
- 原告と被告の関係
- いつ、どのような目的でお金を渡したか
- どんな約束だったか
- 相手がどのように約束を破ったかーを具体的に記載しましょう。
陳述書には決まった形式はありません。自分の言葉で、時系列に沿ってわかりやすくまとめることがポイントです。
証拠は早めに保存しておくのが鉄則
特に、投資詐欺や出資金詐欺のようなケースでは、契約書や領収書といった正式な書類が存在しないことが多くなります。そのため、日頃から証拠になりそうなやり取りや振込記録は保存し、印刷しておく習慣が重要です。
少額訴訟直前になって証拠が消えてしまった場合、裁判で不利になることも考えられます。
まとめ|少額訴訟でも証拠の有無が勝敗を左右する
少額訴訟は1回の審理で判決や和解が決まるスピード重視の手続きですが、証拠がきちんとそろっていれば、原告にとって大きなアドバンテージになります。
お金の返済を求める場合には、
- 振込記録
- メール・LINEのやり取り
- 陳述書
といった証拠をしっかり準備し、訴訟に備えましょう。通常訴訟では「甲1号証、甲2号証」などと証拠にナンバリングしますが、少額訴訟でもこれにならうか、あるいは「添付資料1、添付資料2」などとするだけでもかまいません。
「言った・言わない」の水掛け論に持ち込まれないためにも、証拠の保存と提出が少額訴訟のカギを握ります。
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