相手が判決を受け取らないと、効力が生じない?
詐欺被害金の返還を求める少額訴訟を起こした私は、相手の「欠席裁判」により、全面勝訴することができました。
少額訴訟の判決には「支払い命令」が付いていました。ただ、判決が出ただけでは、お金が回収できるわけではありません。相手が判決に従うとは限らないからです。実際に私の少額訴訟では、相手が判決を受け取りませんでした。
判決は「相手に送達してから2週間」で効力が生じます。つまり、裁判所から特別送達(書留)で郵送されてきた判決は郵便受けに投函されることはなく、相手が対面で受け取る必要があるのです。ところが私の少額訴訟の相手は、判決を受け取りませんでした。
私の少額訴訟の勝訴判決は、相手が受け取らなかったため、宙に浮いた状態になっていたのです。
居住調査のために探偵事務所へ依頼
相手が少額訴訟の判決を受け取らなかったため、私は裁判所に「公示送達」を申し立てました。
公示送達は、相手が少額訴訟の判決の受け取らなかった場合でも、裁判所での掲示を経て、判決が相手に送達したとみなす制度です。
私は少額訴訟を提訴した際も、相手が訴状を受け取らなかったため、付郵便送達の申し立てが必要になりました。今回も付郵便送達のときと同じ探偵事務所に、公示送達の居住調査を依頼しました。
ただこのときは少額訴訟を提訴したときと違って、相手が住所地から退去していました。このため判決を物理的に受け取れなかったのです。これには驚きました。
今度はガス・電気・水道メーターの停止、郵便受けの空き具合、近隣住民への聞き込み、建物外観写真の撮影、住民票の取得などによって、相手が「現住所には住んでいない」ことを証明しなければなりませんでした(公示送達の申し立てには、相手の転居先まで突き止める必要はありません)。
住居調査の依頼から1週間ほどで、探偵事務所から調査結果が届きました。困ったのは、調査結果が速達で送られてきたことでした。私は被害にあったことも、少額訴訟を起こしたことも家族には秘密にしていたのです。大急ぎで郵便局に連絡して、窓口受け取りに変更してもらいました。
余談ですが、裁判を起こすと、裁判所から次々と書類が届きます。先述したように、ほとんどが「特別送達」(書留)であるため、原告本人か家族が受け取らなければなりません。家族に知られたくなくても、隠し通すのは困難です。こうした場合、「送達場所」を職場などにしておくと、気をもむこともありません。

ようやく「判決の送達完了」…すぐに強制執行を準備
支払い命令付き判決を債務名義として使える段階へ
少額訴訟の判決は裁判所の掲示板に1週間公示されます。私は裁判所に判決が公示された日付と、「判決の送達」を裁判所に連絡して確認しました。ここまでに少額訴訟から1か月半近くかかりました。
少額訴訟の判決が送達したことを確認すると、私はすぐに「差し押さえ命令」の申立書を裁判所に送付しました。資産隠しをされる前に動く必要があったからです。
現に相手は住所地を引き払って、転居先もわからなくなってしまいました。いざという場合には相手の自宅に詰め寄せて、返済を迫るつもりでいましたが、それも不可能になってしまいました。
まさかの事態!差し押さえ申立書に不備が…
書類を送ったのに、裁判所から何の連絡もない?
ところが、差し押さえ命令申立書を作成し、裁判所へ郵送して3週間ほどしても、裁判所からは何の連絡もありません。
不安になって裁判所に電話をすると、「申立書に不備があったため後回し」にされていたのです。少額訴訟の支払い命令付き判決が出てから、公示送達、差し押さえ命令をあわただしく申し立ててきました。ここまでに約2か月が過ぎたというのに、手続きは止まっていたのです。
申立書に不備があったのは自己責任です。それでも、私は天を仰ぐ気分でした。これまでに費やした時間と労力、お金が無駄になりかねなかったからです。
体験から学んだ教訓:強制執行には「スピードと正確さ」が必須
相手に資産を隠されないうちに動くこと
一連のプロセスから学んだのは、「少額訴訟で勝訴しても、お金の回収は一筋縄ではいかない」ということです。とくに相手が少額訴訟の判決に従わない、または判決を受け取りさえしなかった場合は、公示送達あるいは付郵便送達の手続きに、時間と費用を費やすことになります。
申立書の不備で、貴重な時間を失わないために
もう一つ、「差し押さえ命令申立書」の作成は簡単ではありません。申立書にミスがあると、後回しにされることもあります。ミスのない申立書が優先的に処理されるのは当然です。
本人訴訟で臨む限り、回収できるかどうかはあくまでも自己責任です。時間がたっても連絡がない場合は、裁判所に確認の連絡を入れたほうが賢明です。
少額訴訟の訴状作成は、それほど難しくありません。また細かなチェックもありませんでした。
ただし、差し押さえ命令や強制執行の申立書は、相手の財産に制限をかけることになります。そのため裁判所のチェックも厳しくなります。裁判所の形式に従って、正確に記入しなければなりません。
差し押さえ命令や強制執行の申立書は、司法書士などに依頼するのもひとつの手です。費用は数万円ですが、少額訴訟の支払い命令付き判決を無駄にしない、回収の「必要経費」と考えれば安いものなのかもしれません。
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