少額訴訟などの訴状では一般的に、「訴訟費用は被告の負担とする」と記載することが一般的です。このような一文を訴状に記載しておくと、少額訴訟で勝訴した場合に、訴訟費用を被告に請求することが可能になります。
ただ、実際に被告に訴訟費用を請求するのは、現実的とはいえません。筆者も少額訴訟の訴状に、「訴訟費用は被告の負担とする」という一文を記載したものの、実際に請求することはありませんでした。
訴訟費用を被告に請求しなかったのは、請求のための申し立てが別途必要になるからです。訴訟費用の請求に手間と時間をかけたとしても、「訴訟費用」に含まれるのは、少額訴訟の支出の一部にすぎません。
本記事では、少額訴訟の「訴訟費用」の内訳や、被告に請求する方法、現実的な注意点をわかりやすく解説します。
訴訟費用は「被告負担」にできる?
訴状に「訴訟費用は被告の負担」と記載可能
少額訴訟では、訴状に「訴訟費用は被告の負担とする」と明記することで、判決にその旨を反映させられます。原告の訴えを認める判決になれば、判決確定後に被告に対して費用の支払いを請求できます。和解になった場合は、訴訟費用の負担についても、原告と被告の話し合いによって決まります。
ただし、請求には「訴訟費用額確定処分の申立て」が必要
ただし「判決で勝った=すぐに訴訟費用を被告に請求できる」わけではありません。実際に被告から訴訟費用を支払ってもらうには、「訴訟費用額確定処分の申立て」を経て、費用の金額を裁判所に確定してもらう必要があります。

少額訴訟の訴訟費用はいくら?
主な費用は収入印紙と予納郵券代
少額訴訟で被告に請求できる「訴訟費用」は主に以下の2つです。
- 収入印紙代(請求金額に応じて決定)
- 予納郵券代(裁判書類送付に必要な切手代。裁判所、切手代の値上がりによって異なるが約6,000円前後)
弁護士や司法書士に訴訟を依頼した場合の費用や相談料、簡易裁判所までの交通費、付郵便送達の居住調査費用などは訴訟費用に含まれません。
ただし少額訴訟に原告側の証人が出廷した場合には、証人の旅費を訴訟費用として被告に請求することができます。
30万円を請求する少額訴訟の被告負担費用例
たとえば、30万円を請求する少額訴訟で証人を呼ばないケースでは:
- 収入印紙代:3,000円
- 予納郵券代:約6,000円
合計で約9,000円程度が目安となります。
訴訟費用を被告に請求するには?
申立書と費用内訳が必要書類
訴訟費用額確定処分の申立てに必要な書類は以下の2点です。
- 申立書
- 訴訟費用の計算書(内訳)
申立てのタイミングと期間
訴訟費用額確定処分の申立ては判決の確定後。期間はおおむね1週間程度で、裁判所から「訴訟費用額確定処分」が出されます。
実際には訴訟費用を請求しない人が多い理由
回収までに時間がかかるリスク
「数千円の訴訟費用のために余計な手続きを増やすより、早く元金を回収したい」。原告にとって、これが現実的な判断です。
少額訴訟などで勝訴しても、実際に訴訟費用を被告に請求するケースはそれほど多くありません。被告が資産を隠したり、資産を使い切ったりする前に、差し押さえを進めたいという心情がまさります。
費用より強制執行を優先するのが現実的
訴訟費用の請求に時間をかけるよりも、差し押さえや強制執行が優先されるのは、少額訴訟で勝訴判決を得るよりも、回収が簡単ではないからです。訴訟費用の請求に時間をかけるうちに、回収不能になるリスクも高くなります。
まとめ:訴訟費用より回収を優先すべき理由
少額訴訟では、訴訟費用を被告に請求することが可能です。ただ、実際には手続きに時間がかかるため、差し押さえと強制執行を優先するケースが少なくありません。
また、訴訟費用には弁護士や司法書士への依頼費用や相談料、簡易裁判所までの交通費、付郵便送達の住居調査費などは含まれず、収入印紙代や予納郵券代などに限定されています。請求したとしても数千円にとどまるケースがほとんどです。
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