お金を回収したいときの2つの選択肢
「お金を貸したのに返してもらえない」「商品の代金を支払ってくれない」など、金銭トラブルに直面したとき、裁判以外にも手軽な法的手段があることをご存じでしょうか?
簡易裁判所で利用できる2つの代表的な制度に「少額訴訟」と「支払督促」があります。
どちらも比較的スピーディーかつ低コストで利用できる手段ですが、仕組みや進め方がまったく異なります。この記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、どちらを選ぶべきかの判断基準までご紹介します。
少額訴訟とは?特徴と基本的な流れ
少額訴訟は、60万円以下の金銭請求を対象とした簡易な訴訟制度です。
特徴は次の通りです:
- 対象は金銭の支払い請求のみ
- 原則として1回の期日で審理が終わり、判決が出ます
- 簡易裁判所で原告・被告が対面で意見を述べ合います
- 支払命令付きの判決が出れば、差し押さえ・強制執行が可能
少額訴訟は証拠を提示し、直接主張できるので、争いが予想されるケースに向いています。また少額訴訟では「和解」を進められるケースもあります。和解になるケースは少なくなく、少額訴訟の4割程度であるといわれています。
支払督促とは?特徴と基本的な流れ
一方、支払督促は、書面だけで進む簡易な手続きです。主な流れは以下の通り:
- 簡易裁判所が、あなたの請求を審査し、請求が認められれば通知を発行
- 被告(相手方)に書類が郵送され、異議がなければ「仮執行宣言付支払督促」が確定
- 異議が出なければ、判決と同じ効力が発生
- 強制執行も可能になります
支払督促は裁判所に出向く必要がなく、書類、オンラインで完結するため、少額訴訟よりもずっと手間が少ないのがメリットです。ただし少額訴訟と同じように、支払督促でも相手の異議申し立てにより、通常訴訟に移行する可能性があります。そのため支払督促よりも、最初から少額訴訟や通常訴訟を選択していたほうが、解決までの時間やコストが少なくなる場合もあります。

少額訴訟と支払督促の比較(メリット・デメリット)
以下の表に、両者の特徴をまとめて比較しました:
項目 | 少額訴訟 | 支払督促 |
---|---|---|
手続きの公開 | 公開の法廷で審理 | 非公開・書面のみ |
出廷の必要性 | あり(原告・被告とも出席) | なし(書面で完了) |
相手の異議が出た場合 | 通常訴訟へ移行 | 同様に通常訴訟へ移行 |
スピード感 | 比較的早い | より早く終わる可能性あり |
証拠の提示 | 必要(その場で提出) | 基本的に不要 |
コスト | 安価(数千円〜) | 通常訴訟の半分程度 |
どちらを選ぶべき?ケース別おすすめ判断基準
少額訴訟、支払督促、どちらの制度を使うかは、相手の対応やご自分の状況によって判断しましょう。
支払督促がおすすめなケース:
- 相手が請求を認めていて支払いを先延ばしにしているだけ
- 裁判所に行くのが難しい
- 相手が連絡を絶っている場合
少額訴訟がおすすめなケース:
- 相手が「払わない」と明言しているなど、争いがある
- 書類だけでは伝えにくい主張や証拠がある
- 相手と話す機会を作りたい(和解の可能性を探りたい)
目的と状況に合わせて、適切な制度を選ぼう
「少額訴訟」と「支払督促」は、どちらも費用をかけずに金銭トラブルを解決できる制度です。しかし、その使いやすさや向いている場面には明確な違いがあります。
注意が必要なのは、少額訴訟、支払督促のいずれも、相手の異議申し立てによって、通常訴訟に移行する可能性があることです。そうなると、裁判所に何回も足を運ばなければなりません。
また通常訴訟と違って、相手の住所がわからない場合は、少額訴訟、支払督促のいずれも利用することができない点にも注意が必要です。さらに少額訴訟、支払督促のいずれであっても、相手が支払い命令に応じないことが想定されます。その場合には差し押さえと強制執行が必要となるため、事前に相手の銀行口座などを把握しなければなりません。
大切なのは、「相手の出方」や「自分の準備状況」に応じて、最適な方法を選ぶことです。
不安な場合は、法テラスや弁護士・司法書士への相談も検討してみてください。
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