はじめに:相手の住所がわからないと少額訴訟はできない?
少額訴訟を起こすには、相手の住所を訴状に記載する必要があります。これは、裁判所から訴状を送るために必要不可欠な情報です。
しかし、相手の住所がわからないケースでは、少額訴訟は原則として提起できません。それでは、相手の住所がわからない場合に、少額訴訟を起こすには、どうすればいいのでしょうか?
相手の住所が不明な場合に考えられる対応策とは?
通常訴訟なら「公示送達」で提訴可能
少額訴訟では使えませんが、通常訴訟であれば「公示送達」という制度を使って提訴することができます。これは、訴状などの書類を裁判所に一定期間掲示することで、相手に送達した(届いた)とみなす制度です。ただし、公示送達を裁判所に申し立てるには、相手の住所を調べても不明であることを証明して、申立書を提出しなければなりません。
送達に使えるのは「住民票の住所」ではなく実際の居住地
少額訴訟などの裁判で必要とされる相手の住所は、必ずしも住民票上の住所である必要はなく、実際に生活している住所(居所)や就業先です。つまり、訴状などが届く見込みのある場所であれば送達は可能です。

相手の住所を調べる方法|費用をかけない工夫も
住民票は取得できるのか?
住民票は相手の住所を知る手がかりになりますが、第三者が自由に取得することはできません。弁護士や司法書士など、訴訟代理人として依頼を受けている(受任)士業のみが職務請求で取得可能です。弁護士や司法書士などは、住民票の取得だけを引き受けてくれるわけではありません。
弁護士・司法書士に依頼するデメリット
ただし、少額訴訟は請求額が小さいため、弁護士費用が回収額を上回るリスクが高く、訴訟代理人を依頼するのは現実的ではないこともあります。
探偵事務所に依頼する方法と費用の目安
探偵事務所で住所調査を依頼することもできますが、費用は10万円前後と高額で、かつ必ずしも発見できるとは限りません。
自力でできる住所調査の工夫
- 相手が事業者ならホームページに所在地が掲載されている可能性
- 登記情報の検索(法人なら有効、個人でも一部可能)
- SNS投稿から地域情報や勤務先を読み取る
登記を調べる公的なサイトとして登記情報提供サービス、国税庁の法人番号公表サイト、民間の登記簿図書館などがあります。いずれも住所の判明につながる確実性は低いですが、費用をかけずにできる調査手段としては試してみる価値はあります。
提訴できても相手が受け取らない場合の対応は?
付郵便送達の申し立てが必要
たとえ相手の住所がわかって少額訴訟の訴状を送ったとしても、相手が受け取りを拒否したり、不在で戻ってきたりすることがあります。その場合は、付郵便送達を裁判所に申立書を提出することで、訴状が送達されたとみなすことが可能です。
付郵便送達には生活実態の証明が必要
- 電気・ガス・水道メーターの動き
- 郵便受けの状況(チラシや郵便物が滞留しているか)
- 外観の写真
- 近隣住民の聞き取り
- 住民票の写し
付郵便送達の申し立てには、相手の居住実態がわかる調査報告を提出し、相手がその住所に居住していると判断されれば送達が成立します。
まとめ:住所不明でもあきらめずに情報収集を
少額訴訟を提起するには相手の住所が必須ですが、地道な調査や付郵便送達を活用することで、提訴や回収の可能性を広げることができます。
「住所がわからない=訴訟できない」とあきらめるのではなく、まずは調べてみる。それでも相手の住所が判明しない場合は、通常訴訟も検討してみてはいかかがでしょうか。
コメント