詐欺被害で30万円を失った…少額訴訟でお金を取り戻した体験談【本人訴訟で解決】

alt="オンラインサロン" 少額訴訟体験
オンラインサロン主宰者の言葉に乗せられて…。

「投資」の誘いに乗せられて

投資するだけで毎年5%の利息を手にできる副業、始めませんか?

参加していたオンラインサロン主宰者の呼びかけに、私は心を動かされました。

もともと副業に興味があった私は、主宰者から案内された口座に30万円を振り込みました。主宰者は「5年間にわたって毎年1回、5%の利息を振り込み、5年後に30万円を全額返済する」と約束していたのです。

30万円は、たしかに高額だとは思いました。それでも主宰者は数々の著作を持つ「作家」であり、実績や知名度もありました。ましてや作品で「社会正義」を語ってきた主宰者が、自身の読者でもあったオンラインサロンの会員に、ウソをついてお金をだまし取るなどとは、そのときは想像すらしなかったのです。

当時の私は主宰者を信頼していました。「何もせずに利息が振り込まれるなら」という軽い気持ちで、疑うことを知らなかったのです。

主宰者は会員からお金を集めて、「新しいビジネス」を始めるとうたっていました。

ところが主宰者の説明は二転三転します。「ビジネス」が頓挫したと釈明する一方、会員から集めたお金をどのように「管理」「運用」しているのか、曖昧な説明を繰り返しました。

結局、主宰者が利息を振り込んだのは2年だけでした。その理由は「ビジネスが破綻したから」でしたが、もともと「ビジネス」など存在しませんでした。主宰者の目的は集めたお金を元手に「ビジネス」を始めることなどではなく、「ビジネス」をうたってお金を集めることだったのです。

主宰者は「全額返済する」と約束して集めたお金を、一銭も返済しませんでした。返済を求められても「騙される方が悪い」と、こちらに責任を転嫁したのです。

誰にも相談できずネットで調べる日々

「まさか自分が詐欺に遭うなんて…」

私はお金を騙し取られたことを、家族や友人にも相談できませんでした。

一方の主宰者は反省するどころか、こちらに責任を転嫁するだけで、一向に返済に応じません。主宰者は、SNSを中心に相変わらず社会正義を語ったり、「株やFXで稼いでいる」などと羽振りのよさを発信したりと、罪悪感のかけらもありませんでした。

その影では、被害者に責任を転嫁し、お金を返せなくなった言い訳を繰り返しました。私はすっかり人間不信に陥りました。

私は警察に「被害」を相談しました。ところが「詐欺と立証するのは難しい」とつれない返事。被害届も受理されそうにありません。個人間のお金の貸し借り、金銭トラブルには警察も、簡単には捜査に乗り出してはくれません。

無料法律相談にも電話しましたが、やはりあきらめるよう促されました。それは「最初からお金をだまし取るつもりだった」ことを、主宰者が認めるはずがないからです。おそらく「集めたお金を運用するつもりだったが、うまくいかなかった」と言い逃れすることでしょう。

詐欺罪として立件するためには、相手側に「最初からお金をだまし取るつもりだった」という「欺く意思(欺罔行為)」があったことを証明できなければなりません。そのような証拠はおそらくないでしょう。警察がなかなか捜査に乗り出さないのも、そのためです。

それなら、弁護士に依頼して相手を訴えればいいのかというと、弁護士も簡単に依頼を引き受けてはくれません。

こうした投資詐欺のようなケースでは、お金を回収できる見込みはそれほどありません。お金はすでに使われているか、資産隠しされていることが少なくないからです。弁護士も「成功報酬」が期待できない案件は引き受けません。それは被害者が費用倒れになることを防ぐためでもあります。

「泣き寝入りしかないのか」。失意の中、ネットで見つけたのが「少額訴訟」でした。

オンラインサロン
オンラインサロン主宰者の言葉に乗せられて…。

少額訴訟に踏み切る

費用も手間も最小限。これなら自分でもできるかも?

少額訴訟は、60万円以下の金銭トラブルを対象にした裁判制度です。基本的に1日で審理・判決が出ます。しかも、弁護士がいなくても本人訴訟が可能です。何回も裁判所に足を運ぶ必要がある通常訴訟と違って、少額訴訟なら時間もお金もかかりません。

ただし、少額訴訟を起こされた相手が、裁判所に異議申し立てをして、少額訴訟から通常訴訟に移行させられるリスクもあります。そうなると、弁護士に依頼しない本人訴訟では対応が難しくなります。

それでも私は、相手が少額訴訟を通常訴訟に移行させる可能性は低いと考えました。相手は訴状をはじめとした裁判書類を受け取ることもせず、ただ裁判までの時間稼ぎに終始したからです。

じつは被告が訴状を受け取らない限り、少額訴訟などの裁判は始められません。このように裁判書類の受け取りを拒否して、裁判を先送りしようとする人が少なくないのです。

そこで、裁判の相手が訴状を受け取らなくても、訴状が裁判所から郵送された時点で「送達」したものとみなす「付郵便送達」が設けられています。

私は相手が少額訴訟を提訴するときに付郵便送達を、さらに少額訴訟の判決が出た際には「公示送達相手が判決を受け取らなくても、裁判所に掲示されることで効力を生じさせる制度)」の利用を裁判所に申し立てました。判決は相手が受け取ってから2週間で効力を生じますが、相手は少額訴訟の訴状だけでなく、判決も受け取りませんでした。

付郵便送達と公示送達の申し立てには、相手の居住調査が必要です。私は居住調査を探偵事務所に依頼しました(1回約2万円)。少額訴訟も差し押さえもすべて自力でしたが、この居住調査には最もお金がかかりました。

訴状の文例を参考に自力で作成

付郵便送達と公示送達の住居調査を除いて、少額訴訟から差し押さえまで、お金の回収は全て自力でした。

少額訴訟の訴状は、ネットの文例を参考にして、自分で作成することができました。
主宰者へのお金の振込記録、5年にわたって利息を支払い、お金を全額返済すると約束したLINEのスクショ、案内メールの内容――すべてプリントアウトして証拠として揃え、相手の住所地を管轄する簡易裁判所へ提出しました。少額訴訟は、通常訴訟と違って簡易裁判所で開かれます。

裁判所は弁護士や司法書士など法律の専門家でなくても、質問には丁寧に答えてくれます。

少額訴訟の訴状や証拠も不備さえなければ、受け付けてくれます。もし不備があっても、書き直すべき箇所を教えてもらえます。

だからといって、少額訴訟の訴状などは、いい加減に書いていいはずがありません。とくに大都市にある簡易裁判所は扱う訴訟件数が多いため、書類に不備がある場合、後回しにされる可能性があります。

時間と労力を無駄にしないためにも、少額訴訟の訴状などは、裁判所の書式や法律用語にのっとって、事実関係に誤りがないように作成すべきでしょう。

とくに少額訴訟の訴状や証拠書類に比べて、差し押さえや強制執行の申立書は、一気に難易度が高くなります。差し押さえや強制執行は、相手の財産に制限をかけることになるため、裁判所の形式通りに従って作成しなければなりません。

差し押さえ申立書は、裁判所から電話で説明してもらったうえ、紹介してもらった専門書を参考にして、どうにか完成させました。ただ差し押さえ申立書の提出とその後の修正には、1か月以上かかりました。こうして時間を浪費する間にも、お金を回収できる可能性は低くなってしまいます。確実にお金を回収するためにも、申立書の作成は弁護士や司法書士への依頼も検討すべきなのかもしれません。

相手は欠席。裁判は3分で終了

少額訴訟の当日に話はさかのぼります。私は緊張しながら、少し早めに簡易裁判所に到着しました。

通常訴訟と違って、少額訴訟の法廷は、会議室のように小規模です。出席者は、裁判官と司法委員、そして原告の私の3人だけ。数席の傍聴席には誰もいません。

もし少額訴訟で主宰者と顔を合わせたら、なにを話そうかー。私はあれこれと考えましたが、簡易裁判所に相手(被告)が現れることはありませんでした。

審理が始まってすぐ「被告が欠席したため、原告の訴えを認めます」との判決が言い渡されました。拍子抜けするほどあっけない幕切れでした。

後日、簡易裁判所の支払い命令付き判決が届きました。

しかしここで終わりではありません。少額訴訟の裁判官は、最後にこう告げたのです。

債権執行については、専門家とよく相談して進めてください

私はすぐ現実に引き戻されました。少額訴訟に勝訴したからといって、相手が判決に従うとは限りません。少額訴訟の判決は、長い戦い―差し押さえと強制執行ーの始まりにすぎませんでした。

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